『ミセン』の営業3課は、オ課長が率い、キム代理が実務を支えるチームです。そこへインターンのチャン・グレが入り、二人のもとで商社の仕事を覚えていきます。
会社の電話が鳴っても、受話器を取った先で何を話せばいいのか分からない。囲碁に青春を懸けたグレにとって、商社の初日はそんな戸惑いの連続です。
そんな新人を迎えるオ課長とキム代理は、同じ営業3課にいながら、グレの違うところを見ています。まず3人の名前と顔を結び付けてから、二人の教え方の違いが分かる序盤の場面をたどります。
紹介するのは2014年の韓国ドラマ版です。インターンの採用結果や最終回には触れません。
- オ課長、キム代理、グレの役名・俳優名・立場を一つの表で確認できます。
- 取引先との待ち合わせや、グレが一人で仕事をする場面から、営業3課の関係を読み解きます。
- グレを助ける同期と職場の先輩を区別し、囲碁用語の「未生」が3人の物語にどう響くかを考えます。
【手順】オ課長・キム代理・チャン・グレを、役名と肩書で見分ける
まず覚えたいのは、オ課長とキム代理は以前から仕事を共にしてきた側で、グレだけが新しく入ってきた、ということです。3人とも総合商社ワン・インターナショナルの営業3課で働きます。
| 役名・呼び方 | 演じる俳優 | 営業3課での立場 |
|---|---|---|
| オ・サンシク オ課長 |
イ・ソンミン | 課を率いる上司。グレに仕事を任せ、その進め方にも目を配る。 |
| キム・ドンシク キム代理 |
キム・デミョン | オ課長の部下で、グレの実務上の先輩。日々の仕事をそばで教える。 |
| チャン・グレ グレ |
イム・シワン | プロ棋士を目指していたインターン。営業3課の仕事を一から学ぶ。 |
「オ・サンシク」と「オ課長」は同じ人です。フルネームで紹介されたあと、職場で姓と肩書だけで呼ばれると、初見では新しい人物が増えたように聞こえるかもしれません。
「キム・ドンシク」と「キム代理」の関係も同じです。ここでの「代理」はドンシク自身の肩書で、オ課長が席を外したときだけ課長の代わりを務める、という意味ではありません。
韓国の放送局tvNの人物ポスターでは、サンシクには「과장」(課長)、ドンシクには「대리」(代理)と付きます。二人が同時に登場しても、それぞれの呼び名はそのままです。
対して、チャン・グレの「チャン」が姓、「グレ」が名前です。相関図に「チャン・グレ」、あらすじに「グレ」とあっても、いずれもイム・シワンが演じる新人を指します。
ここで一つひっかかるのが、課長はドンシクの上司でも、グレの上司でもあること。オ課長も直接グレに仕事を教えるので、二人だけの会話にキム代理が入らない場面もあります。
例えば序盤、専門用語が分からないグレに辞典を貸すのはオ課長です。グレが用語を覚える早さに驚くキム代理まで含めて、一冊の辞典に3人が関わります。
この辞典の話は、役職表に収まらない3人の距離をよく表しています。本を貸す人、借りて勉強する人、昨日との違いに気づく人がいて、初めて新人の成長が人に伝わります。
名前が混み合ったら、手元には「オ=課の責任者」「キム=同じ課の先輩」「グレ=インターン」の三つだけ残しておけば十分です。初めから全社の組織図を覚えなくても、営業3課の会話についていけます。
観る前の30秒|3人の名前を顔と結び付ける手順
- 韓国の放送局tvNの公式ポスター一覧を開きます。
- 「오상식 과장」がオ課長、「김동식 대리」がキム代理、「장그래」がグレです。見たい人の名前を選ぶと顔を確認できます。
- 本編では、どの仕事を任せるか考える人と、その手順を新人に教える人を見比べてみてください。
オ課長を演じるイ・ソンミン|部下の仕事を背負う営業3課の責任者
オ・サンシクは、キム代理とグレが働く営業3課の課長です。グレから見れば、自分に何を任せられるかを判断する、いちばん気になる上司です。
登場時の人物設定は43歳。大手商社の課長という肩書から、裁量も人手も十分にある部署を想像すると、彼のいる職場との違いに驚きます。
BSテレ東の人物紹介によれば、営業3課には手間のかかる地味な仕事が集まります。オ課長は引き受けた仕事に誇りを持ち、部下を気にかける人です(BSテレ東の人物紹介)。
そこへ、会社の電話に出ることにも不慣れなインターンが来るのです。グレにとってはようやく得た働き口でも、課長にとっては、いま抱えている仕事をどう回すかという切実な問題になります。
初対面から新人の隠れた才能を見抜き、すぐに味方になってくれる人物を期待していると、オ課長の態度は冷たく映るでしょう。始めはグレの働きぶりへの評価も厳しいものです。
グレの席から見えるのは、オ課長の一日のうち会社での姿です。BSテレ東の人物紹介には、彼には妻と三人の息子がいて、酒を飲んで家に帰ることも多いという、家庭での横顔も載っています。
新人の前では何年も先を歩いているように見える人に、家庭に戻ればまた別の顔がある。その余白のおかげで、オ課長の不器用さにも、くたびれた会社員の生活が感じられます。
演じるイ・ソンミンは舞台から俳優の道に入り、この役で2015年の百想芸術大賞テレビ部門の最優秀演技賞を受けました。本人が撮影を振り返って語ったのは、出演者が食卓を囲んだ話です。
可能な日は皆で食べようと俳優たちに声をかけ、出番の違う日には仲間に応援の連絡もしたそうです(イ・ソンミン本人のインタビュー(先の展開にも触れます))。
監督のキム・ウォンソクから信頼を寄せられたことが印象に残り、細かいことは撮影の場で相談したとも話しています。同じやり取りを作るのに、ひとりで答えを用意していたわけではありません。
そんな現場の話を知ってから三人を見ると、オ課長が自分でしゃべっている場面と同じくらい、キム代理やグレの声を受ける場面にも興味がわきます。
新人に向ける顔と、すでに一緒に働いているキム代理に向ける顔。この二つを見比べると、グレがこれから加わろうとしているのは、オ課長とキム代理が先に築いてきた仕事上の関係なのだと分かります。
キム代理を演じるキム・デミョン|課長の部下で、グレには身近な先輩
キム・ドンシクはオ課長の部下であり、グレには仕事を教える先輩です。オ課長とグレの関係だけを追うと見落としやすいのが、この二つの立場をひとりで引き受けているところです。
営業3課にとって、グレはこれから仕事を覚える仲間です。一方のキム代理には、グレがつまずくずっと前から、日々こなしてきた仕事と、呼吸の分かっている上司がいます。
電話を取り次ぐとき、相手の話のどこを聞き直せば用件が伝わるのか。新人がひとつずつ考え込むことを、日常の手順として身につけているのがキム代理の側です。
その自然さには下ごしらえがありました。商社勤めの経験のなかったキム・デミョンは、会社員の友人に助言を受け、オフィスで電話に出る練習を何度も重ねたと話しています。
インタビューでは、面白い話をするのが好きなところには自分との共通点があり、人への気配りでは役から学ぶことがあったと振り返っています(韓国OSENの本人取材(韓国語))。
電話一本にも練習が要ったという話を覚えておくと、グレとの対比が際立ちます。画面では先輩が当然のようにできることも、突き詰めれば、一度は誰かに教わって覚えたことなのです。
教え方にも彼らしさがあります。ひとりで残って作業するグレに、仕事には人と協力することが欠かせないと伝えるのは、オ課長とキム代理の二人です。
新人が課長に注意されたあと、優しい先輩がいつもその言葉を取り消してくれる、という関係を当てはめると、この場面は読み違えてしまいます。気さくなキム代理も、仕事では課長と同じことを大切にしています。
その一方で、気を張ったやり取りばかりでもありません。キム代理が香水を試すようなそぶりを見せて、顔を近づけた相手の額を軽くつつく、ささやかないたずらがあります。
筋を動かすような冗談ではないのに、手を差し出した人と、それにつられて近づく人の距離が伝わります。職場の上下関係に、知った顔同士にしか生まれない調子が混じる瞬間です。
イム・シワンによると、キム・デミョンは準備をしたうえでアドリブを重ね、相手の受け答えにも新しい反応を引き出していたそうです(Cinem@rtの共演者取材(後半にネタバレあり))。
仕事をしているときと冗談が通じるときで、キム代理の距離の取り方はどう違うのか。三人がそろう場面でグレの隣の先輩に目を移すと、営業3課の居心地を左右する人が見えてきます。
チャン・グレを演じるイム・シワン|囲碁に青春を注いだ26歳のインターン
チャン・グレは、棋士を目指してきた26歳の新人です。オ課長とキム代理にとって当たり前の会社の決まりを、グレは一から覚えることになります。
子どものころから力を注いだのは囲碁でした。父を亡くしてプロへの道を断念し、アルバイトをしていたグレに、母のつてで大手商社のインターンの機会が訪れます。
つまり、働くこと自体が初めてだと言い切ると、彼が生活のためにしてきた仕事が抜け落ちます。グレにとって初めてなのは、電話を受けて用件を回し、コピーを頼まれるような会社での働き方です。
これまで全力で取り組んできたことが、新しい場所では履歴書の強みとしてほとんど通じない。すでに自分の居場所を持つオ課長やキム代理と並んだとき、グレの肩身が狭く見える理由のひとつです。
序盤、その境遇を一目で伝えるのが父親のスーツです。イム・シワンは、自分の体には大きすぎるその服こそ、新しい社会になじみきれないグレを象徴していたと話しています。
服自体はきちんとした仕事着なのに、借りた本人には合っていない。会社員らしく見せようとするほど、まだこの職場に自分の場所がないことが伝わってくる、と読める衣装です。
シワンが役に重ねたのは、歌手を目指した練習生時代やデビュー直後の自分の感情でした(Cinem@rtの本人インタビュー第1回)。
演じる側にも、たやすく通り抜けられない関門があったそうです。撮影では初めて聞く貿易用語に苦労し、B/L(船荷証券)が何を指すのか、自分で調べたと明かしています。
営業3課の二人は、会社の中で使う言葉をすでに共有しています。グレは話し手の言葉を聞き取れたとしても、それがどんな書類や作業を指すのかをたどるところから始めます。
一方、囲碁に費やした時間は商社に入っただけで消えるものでもありません。テレQの番組紹介は、記憶力や集中力をグレの持ち味に挙げています(テレQの番組紹介)。
囲碁の経験とコピー機の使い方には直接のつながりがありません。それでも、人の前に座り、相手がどう出るかを考えるときには、盤の前で長く過ごした彼だけの時間が意味を持ち始めます。
オ課長とキム代理は、グレの子ども時代を見てきた人ではありません。新人の過去を知る視聴者と、今日の仕事ぶりから彼を知るしかない上司や先輩では、初対面の印象にずれが生まれます。
グレを見る楽しみは、何も知らないように見えた人の中に、すでに積み重ねてきた年月を見つけること。その年月がどんなきっかけで同じ課の二人に伝わるかは、序盤を観るうえで楽しみに残しておけます。
【注意点】アン・ヨンイ、チャン・ベッキ、ハン・ソンニュルは営業3課の先輩?
ヨンイ、ベッキ、ソンニュルは、グレと同じ時期にインターンとして働く同期です。グレより仕事に慣れて見える人もいますが、オ課長やキム代理とは、最初から彼との関係が違います。
まぎらわしいのは、困ったグレが手を借りる相手です。営業3課の先輩ならキム代理ですが、初日に何かと助けを求めるのは、カン・ソラ演じるアン・ヨンイです(BSテレ東・第1話)。
ヨンイは英語とロシア語に通じ、顧客にも自分で向き合えます。コピーの取り方から迷うグレと並ぶと先輩に見えるのは、当人がすでに商談の場で力を発揮しているからです。
隣の新人はこんなことまで一人でできるのか。グレの心もとなさは、ベテランのキム代理といるときより、同じ出発点にいるヨンイを前にしたときのほうが想像しやすいかもしれません。
もう一人、「チャン」という姓だけで覚えると混ざりやすいのがチャン・ベッキです。演じるのはカン・ハヌルで、グレ役のイム・シワンとは別人です。
幼い頃から積み上げた学歴や技能に自信を持つベッキには、眼鏡ときっちり分けた髪がよく似合います。これらは本人が役を考え、監督に提案した装いです(カン・ハヌルのインタビュー)。
同じ姓の二人には、ひとつのことに長い時間を費やしてきたという共通点があります。ベッキの努力は履歴書で説明しやすく、碁盤に向かってきたグレの努力は、会社ではすぐに読み取ってもらえません。
ピョン・ヨハン演じるハン・ソンニュルは人付き合いがうまく、社内の事情にも通じています。キム代理のような親しみやすさを感じても、彼はグレと同じく評価を受ける側です。
ソンニュルが大切にするのは工場で働く人の感覚です。現場で働く父の背中を見てきたという背景が、なぜオフィスの外で起きることにこだわるのかを教えてくれます(BSテレ東・人物紹介)。
ヨンイなら顧客の言葉、ベッキなら身につけてきた知識、ソンニュルなら品物を作る人々。同じ商社に入ったばかりでも、同期が最初に目を向けるものは、これだけ違います。
グレにとって同期は、同じ課題に自分とは別のやり方で挑む仲間です。一方、オ課長とキム代理は、今のグレに何を任せ、その仕事をどう引き受けるかを考える側にいます。
初見では、部署名をすべて覚えるより、グレが困ったときに誰に声をかけるかを追うほうが簡単です。相手がヨンイなら、同じように試されている仲間が、グレのために手を止めてくれたことになります。
【具体例】渋滞で来られないオ課長に代わって、グレが取引先へ
オ課長とグレの最初の距離がよく分かるのは、商社勤めを始めたばかりのグレが、課長より先に取引先を訪ねるくだりです。ここでは、上司のほうが新人の助けを必要とします。
BSテレ東の全34話版の第2話では、オ課長が渋滞につかまり、約束に間に合いそうもなくなったところで、グレに出番が回ってきます(BSテレ東「第2話」)。
グレが引き受けるのは、担当者にその場で待ってもらい、課長が話せる時間をつくることです。取引の条件を詰めるところまで任された、と考えると、この小さな役目の難しさを見落としてしまいます。
まだ社内の電話に出るにも苦労する人が、今度は会社を代表する格好で先方に会うのです。社内なら助けを求められても、この訪問では、頼りたい上司が道の途中にいます。
取引先にとって、会う約束をした相手はオ課長です。一方の視聴者は、目の前の青年がつい先日まで会社と縁のない暮らしをしていたことを知っています。
この情報の差があるから、グレが担当者のところへ向かうだけで緊張が生まれます。相手にしてみれば商社から人がひとり来たというだけのことが、本人には大きな一歩なのです。
そこで顔を出すのが、グレが子どものころから打ち込んできた囲碁です。会社の入口では職歴にも資格にも数えてもらえなかった時間が、目の前の人との接点になります。
囲碁を打てない人にも、この場の緊張は伝わります。グレが盤上でどれだけ強かったかを知らなくても、上司が来るまでの短い時間に、彼が何を持ち込めたかは分かるからです。
オ課長を主人公に置き換えてみると、同じ訪問が少し違って見えます。自分なら先方と何を話せばよいか分かっていても、その場にいない以上、まずは新人に託すほかありません。
上司の判断ひとつで新人の働き方が決まるように見えていた二人が、ここでは相手の到着や働きにそれぞれ左右されます。会社の肩書からは読み取れない二人の最初の接点です。
この初々しさには、俳優同士の興味深い準備の話もあります。制作発表でイム・シワンは、会社員の友人には話を聞いたものの、会社での事前体験はあえてしなかったと話しています。
本人によれば、グレが初めて会社に足を踏み入れる感覚を大事にしては、と勧めたのはオ課長役のイ・ソンミンでした(制作発表でのイム・シワンの発言(韓国語))。
二人が初めから息の合った同僚に見えなくても、それでちょうどいい。営業の約束を背負う人と、初めてその約束の重さを知る人が、たまたま一件の訪問を分け合うところから、二人の仕事は始まります。
【具体例】一人で残ったグレに、キム代理はなぜ「みんな」の話をするのか
グレが一人で会社に残った翌朝、オ課長とキム代理は同じ仕事に違う角度から目を向けます。課長が気づくのはグレの粘り強さで、代理が教えるのは同僚を困らせない整理の仕方です。
BSテレ東の全34話版の第3話で思い出したいのは、直前の工場の一件で、同期に入った連絡がグレには届かず、彼だけが取り残されたことです(BSテレ東「第3話」)。
読んでおきたいのは、この出来事の順番です。同期にうまく交ざれずにいる若者が、次に選ぶのが、人が帰ってからも自分の手で最後までできる作業なのです。
放送当時の韓国の報道は、その晩の仕事を、IT関連のファイルをフォルダーに分類する作業と伝えています。グレはどう分ければ使いやすくなるかを自分なりに考え、夜をかけて整理します。
グレの側からすれば、仕事を覚えようとする気持ちを形にできる機会です。人に追いつけなくても、手をかけた分だけ画面の中に成果が残るところに、わずかな手応えがありそうです。
ところが同じフォルダーを開いても、キム代理はグレと別のものを見ています。すでに社内で使っている分類を変えたら、ほかの社員はどうやって目当ての資料にたどり着くのでしょう。
たとえばグレが外出しているあいだに、誰かが急いで資料を取り出したいとします。整理した本人に尋ねてようやく見つかるのなら、本人にとっての分かりやすさだけでは足りません。
キム代理の説明で、社内の分類には、みんなで同じ場所を探せるようにする約束があると分かります(放送当日の場面を伝えた「Xports News」(韓国語))。
オ課長はグレの粘り強さに目を留めます。キム代理はさらに、何がまずかったのかを課長から新人に教えないのかと問い、自分でもグレに分類の理由を説明します。
役職だけ書いた図では、キム代理は課長の一段下に位置します。でもこの場面でグレが頼れるのは、自分の作業で誰が困るのかを具体的に教えてくれる、その一段近い先輩です。
グレに厳しく響く言い方なのも、この関係の面白いところです。励ましの言葉ならひとまず救われるでしょうが、フォルダーのどこを直せばいいのかまでは分かりません。
また、連絡が届かず困ったばかりのグレ自身も、次にその資料を探す人の心細さを想像しやすい立場です。ひとりだけ事情を知らないという経験が、ここで思いがけず相手の側に重なります。
取引先への訪問では、グレがひとりで先に動くことがオ課長の助けになりました。同じグレがひとりで残ると、今度はキム代理から、あとでフォルダーを開く仲間の存在を示されます。
二つの場面をつなぐのは、頑張ったかを採点する上司の目よりも、仕事の続きを誰が引き受けるかという問いです。その相手の顔が一人ずつ分かってくるところに、営業3課を見守る楽しさがあります。
序盤の見どころを開く|資料の分類をめぐる3人の見方
- グレは、頼まれた資料を自分の力で分かりやすく整理しようとします。
- オ課長は、そのやり方を評価しながら、新人が粘って取り組んだことにも気づきます。
- キム代理は、別の人が同じ資料を探すときに困らないかを考えます。
営業3課の机はどこにある? 撮影現場から見える3人の距離
営業3課はオフィスの出入口に近く、グレは通路を向いて座ります。営業3課の3人を見つけたいとき、顔と同じくらい頼りになるのが、この席の位置です。
廊下から来れば目に入りやすい席ですが、そこに座る本人には、やって来る人が誰なのかも、用件を誰に引き継げばよいのかも、まだわかりません。
オ課長とキム代理には見慣れたフロアが、イム・シワン演じるグレには知らない人の行き交う場所です。先輩と同じ机の列に加わったばかりの新人の心細さが、座る向きからも伝わります。
2014年、韓国での放送中に制作陣が報道陣に公開したのは、ソウル駅前の「ソウルスクエア」です。営業の各チームや部長室を置いたフロアのほか、市街を見渡せる屋上も撮影に使われました。
ビルには実際に働いている人たちがいるため、ここでの撮影は主に退勤後や週末でした。平日の撮影にも対応できるよう、京畿道の南楊州にもう一つ、同じオフィスを造っています。
イ・ジェムンプロデューサーによると、別セットにはエレベーターの造りまで再現したそうです。別の場所でカメラを回しても、グレが毎朝同じ会社に通っているように見えるわけです(撮影現場の取材記事(韓国語))。
机には書類やメモが並び、壁には世界地図や受注額の表があります。美術スタッフは実在する商社を訪ね、ワン・インターナショナルのロゴ入り用品も作りました。
グレが一枚の紙の扱いに戸惑う間にも、オ課長やキム代理は国境を越える取引を抱えている。そう想像できるのは、同じ室内に、手元のメモと世界地図があるからでしょう。
人の配置にも理由があります。ハ代理役のチョン・ソクホはMBNスターの取材で、オフィスの場面では担当する台詞がなくても、多くの出演者が待機していたと明かしています。
別のチームを撮っていても、その奥の社員が画面に入るためです。特に営業2課の面々は、カメラをどこに向けても映りやすかったといいます(出演者が語るオフィス撮影(韓国語))。
キム代理がグレに向き合うその向こうでも、同僚は自分の席で働いています。課長の注意を受ける新人にとっては、二人きりで聞く一言と、ほかの社員にも届く一言では重みが違います。
では、机から離れた二人はどうでしょう。オ課長とキム代理が言葉を交わす屋上には部署を隔てる机がなく、目の前にはソウルの街が広がっています。
役職はそのままでも、フロアで交わす業務連絡と、外の空気を吸いながら交わす話では、聞こえてくる声の調子が変わります。グレがこの二人のいる場所に入っていく物語なのです。
なぜ題名は「未生」なのか。営業3課を囲碁の言葉から読む
「未生」は、盤上で生きるか死ぬかがまだ定まっていない石を指す韓国の囲碁用語です。原作漫画を紹介する文化庁メディア芸術祭の解説を読むと、この題名がグレの出発点によく合っていることが分かります。
バイトをして生活してきた26歳のグレには、時間をかけて身につけたものがすでにあります。けれど、営業3課の机に着いた日には、電話一本で立ちすくむ姿のほうが目立ちます。
囲碁を知らない方も、石そのものの形と、盤上での立場は別だと考えてみてください。石の形は変わらなくても、そばにどんな石が置かれ、どこにつながれるかによって、先の見通しは変わってきます。
グレの記憶力も、彼が社内の用語を知らないうちは周りから見えません。覚えるべき言葉の載った本を課長から借りて、そばにいるキム代理が初めてその早さを知ります。
原作者ユン・テホの『京郷新聞』インタビュー(韓国語)によると、出版社からは達人を意味する別の題名を提案されていたと振り返っています。職場では初心者の青年を主人公に選んだ作者が付けたのが「未生」でした。
またユン・テホは、いろいろな仕事をしている人が集まる場所として総合商社を選んだと話しています。グレにとって同じ会社の人に見えるオ課長とキム代理の仕事ぶりが違うのも、まさにその面白さです。
もし題名が「達人」だったら、取引先に向かうグレには、囲碁の腕前で驚くような手を打つことを期待するかもしれません。「未生」と知って観ると、まず彼をそこへ送り出す人がいることに目が向きます。
課長と代理の側から題名を読み直すこともできます。課の責任を負うサンシクにも、実務を知るドンシクにも、新しくやってきた相手がどんなことならできるのかは、まだ分かりません。
この先グレは何者になるのかと考える前に、二人がいつ、どんな仕事を通してグレのことを一つ知ったのかに注目すると、評価が生まれる瞬間を拾えます。序盤なら、手がかりは高価な契約書より一冊の辞典にあります。
会社の電話を取れない青年を、最初の印象だけで「頼りない新人」と決めてしまっていいのか。グレの初出勤を見守るこちらも、営業3課の二人と一緒にその問いを引き受けることになります。
だから初回に戻るとき、覚えておきたいのは囲碁の複雑なルールより、机を囲む3人の名前です。オ・サンシク、キム・ドンシク、チャン・グレの3人には、一緒に仕事を始めて初めてお互いに見えてくる顔があります。
キム代理はグレの同期ですか?
キム代理は営業3課でグレを迎える先輩です。グレが初日から頼るアン・ヨンイのほうが、同じ時期に働き始めた同期です。
「営業3チーム」と「営業3課」は違う部署ですか?
この記事では同じ部署を指します。テレQの番組紹介には「営業3チーム」、BSテレ東の人物紹介には「営業3課」と表記されています。
手元のDVDで「第3話」の場面が見つからないのはなぜ?
本文の話数はBSテレ東の全34話再編集版に合わせています。日本のSPO発売DVDは全20話なので、話数が合わないときは「取引先への訪問」「資料整理」などの出来事を目印にしてください。